ジョニ・ミッチェルの
ファースト・アルバムは
1970年4月1日に
日本ビクターから発売された。
当時10代の僕にとって
幸運だったのは
そのファースト・アルバムを
偶然購入したことだ。
大げさに
聞こえるかもしれないが
前年の秋に出た「アビー・ロード」の
生温さに落胆し初めてビートルズの
アルバムを買わなかった僕。
そんな自分にジョニの
ファースト・アルバムは
真剣に音楽に向き合う喜びを
よみがえらせてくれた。
当時このアルバムを友人に聞かせると
アルバムの片面が終わるまで
誰も言葉を発しなかった。
聞く者をそうさせるだけの
冬の早朝のような凛とした美しさが
このアルバムの中にはあった。
ジョニ・ミッチェルがその
ファースト・アルバムを発表する前
1963年から1967年までの
未発表ライブ音源がCD化された。
これはジョニ・ミッチェルの
熱心なファンにとって
「プリーズ・プリーズ・ミー」以前の
ビートルズのデッカ・デモ録音や
ハンブルグ時代の録音を
手に入れるようなもの。
ビートルズの場合は
決して期待通りではなかったけれど
ジョニ・ミッチェルのそれは
予想をはるかに超える素晴らしさだ。
一番驚いたのは
カナダの地元ラジオ局に残されていた
ライブ録音で歌唱に関していえば
ジョニは19歳にして完璧な技巧を
身につけていたことがわかる。
付属のブックレットは
笑えるエピソードでいっぱい。
中でも驚いたのは
ジョニのライブを見た
ジミ・ヘンドリックスが
ジョニのファンになり
テープ・レコーダーを自ら持参し
録音テープを持ち帰ったというくだり。
JONI MITCHELL/EARLY YEARS 1963-1967 (5 CD SET)
REPRISE/RHINO:WPCR18375 (JP 2020)