今年の夏
ジョアン・ジルベルトが
88歳で亡くなった。
このわたくし15年前までは
ジョアンのファーストネーム
「JOAO」を「ジョアオ」と
発音していた。
なのに今じゃ彼のアルバムを
すべてブラジル原盤で揃えるほどの
ジョアン・ジルベルト信者に。
そのきっかけはもちろん2003年の
初来日公演を見たからだが
横浜パシフィコで見たライブは
1曲目からアンコールまで
演奏するジョアンの姿に
文字通り「釘付け」。
その翌年2004年に
CDで発売された初来日公演の
ライブ録音がLP盤で発売された。
まず最初に
日本公演の
ライブCD発売のいきさつをば。
2003年初来日時のジョアンは
日本でライブ録音をする気は
全くなかった。
しかし
国際フォーラムの
モニターエンジニアの近藤さんが
ジョアンの承諾なしに
こっそりダット録音していたものを
ジョアン聞かせたところ
ジョアンが大いに気に入り
プリンスホテル桜タワーの部屋で
来日中何度も聞いていたという。
そんなかんやで
ついにジョアンから
発売オーケーの許可が
出たというわけだ。
エンジニアの近藤さん曰く
ジョアンのヴォーカルは
とても小さいのだとか。
それはモニターのヴォリュームを
上げるとハウリングを
起こすくらいのレベルらしく
実際このLP盤に収められた
一曲目は歪が目立つ。
そんなトラブルも何のその
徐々に気分が乗り出すジョアン。
ジョアンの場合
「気分が乗り出す」というのは
ジョアンの体の中で
魂が自由に羽ばたき始めるということ。
ジョアンの演奏と歌が
インプロバイズするのはそのせいだ。
コンサートのピークは
神業としか思えないギターと歌で
聞く者を圧倒する「マダムとの喧嘩は
なんのため?」。
トータルでいうと
72歳という高齢は感じるものの
ジョアンの気力体力
そして音楽家魂に唸らされる70分間。
実際
このライブの2年後に
パートナーとの間に
子供をもうけているのは
その動かぬ証拠(笑)。
「イパネマの娘」や
「三月の水」など定番中の定番が
収録されていないのは残念だが
これは演奏の出来に満足出来なかった
ジョアンが外したからだ。
JOAO GILBERTO IN TOKYO (2 LP SET)
UNIVERSAL MUSIC JAPAN:UCJJ9019/20 (2004/2019 JP)