JAMES TAYLOR BEFORE THIS WORLD ジェイムス・テイラー13年ぶりの新作

ジェイムス・テイラーの
13年ぶりの新作は
控えめに言っても
奇跡のようなアルバムだ。

最初聞いたときは
いつものジェイムス以上に
東部13州っぽい
ニューイングランド風
アメリカーナなサウンドで
今更これかよ?と思ったけれど
繰り返し聞いたら
アメリカのどの地域にも
属していないオリジナル風味の
アメリカーナだった。
少なくとも
カリフォルニアっぽさは
微塵もないね。

この最新作のライナーに
ジェイムス自身が書いた制作ノートが
載っているのだが
ジェイムスはこのアルバムの
レコーディングを歌詞が
まったく出来ていない状態で
始めたのだという。
しかしジェイムスの頭の中には
全10曲分のメロディーと
そのアレンジメントが
レコーディング初日には
出来ていたというのだから
ジェイムスは「ミュージック・マン」
そのものだね。

聞き手がすぐにはそれと気付かない
隠されたラグジュアリー感は
半端じゃない。
愛妻キムのことを歌った
「ユー・アンド・アイ・
アゲインM2」では
主役を食いそうな饒舌なチェロが
世界のヨーヨーマだったり、
普通のアーティストなら
アルバムに1曲か2曲参加して
「もらえる」だけで御の字の
スティーヴ・ガッド(ドラムス)が
アルバム全曲にフューチャー
されていたりとか、
キモノの裏地に表地より
高級な布地が使われてます的世界が
展開されてるのだ。
そして
一つ一つの「音」が
先月生まれて初めて見た
桂離宮の石畳の石コロのように
美しく磨きこまれ
配置に無駄と狂いがない。
それでいて聞き手に
緊張を強いらないのが
ジェイム・テイラー・マジック。

日本語対訳を見てみた。
タイトル曲
「ビフォア・ジス・ワールド」は
地球賛歌の逆説的環境問題提起
ソングで品が良い。
3度目の結婚をするまでは
見かけによらず「愛の嵐」の
連続だったジェイムスだが
この新作は現在の良好な
私生活を反映した
落ちついた曲が並んでいる。
その中で10代のような
はつらつとした気分に溢れた
「エンジェルス・オブ・
フェンウェイ M3」は
ジェイムスのお母さんへの愛と
ボストン・レッドソックスへの愛を
一曲の歌に込めた傑作だと思う。
(ジェイムスのお母さん
トルーディは92歳の今も
マーサズ・ヴァインヤードで健在)

日本盤には3曲の未発表
ボーナス・トラック
(ウディ・ガスリー、
ハンク・ウィリアムス、
トラッドソング)が
収められている。
たぶんジェイムスは
来るべきワールド・ツアーに
日本公演をぜひ組み込みたいという
強い想いで日本向けに
この特別サーヴィスを
OKしてくれたんだと思う。
ジェイムスは過去に
世界中どこの国にも
こんなサーヴィスを
したことが無いんだもの。
約10年ほど前キョードーに
ドラムスにスティーヴ・ガッドを
フューチャーした日本公演の
打診があったらしいのだが
ギャラの高額さに
キュードーが二の足を踏み
流れた経緯があった。
この新しいアルバムを引っさげての
ワールド・ツアーにもたぶん
スティーヴ・ガッドは
加わるだろうから今度こそ
日本公演実現してほしいよね。

PS
下のユーチューブで
涙ぐむジェイムス・テイラーを見たのは
生まれて初めて。

その下のユーチューブで
ジェイムスが着ている
ベストとカーディガンは
当時の恋人ジョニ・ミッチェルが
編んであげたもの。
余計なお世話でしょうけど
今どこに?

追記
このアルバム
来週発表されるビルボード誌で
ジェイムス・テイラー
47年のキャリアで
初めてのナンバーワン・アルバムに
なるらしい。
これが来日公演実現の
強い後押しになると
いいんだけど・・・

image
JAMES TAYLOR/BEFORE THIS WORLD (LP)
CONCORD/UNIVERSAL : 0888072353824 (EU 2015)

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